レーザー刻印を持ち込みで頼む|替えがきかない品の注意点
目次
お手持ちの品にレーザー刻印を頼むとき、最初に決めていただきたいのは「それは、もう1つ買えるものかどうか」です。買い直せる品なら、そのまま送っていただいて構いません。買い直せない品なら、同じ素材の切れ端を一緒に送っていただくところから始めます。ここだけで、持ち込み加工の失敗はほとんど防げます。
こんにちは、Ichis広報の紗英です。Ichisでは、素材をこちらでご用意する加工と、お客さまがすでにお持ちの品を送っていただく加工の両方をお受けしています。後者はいわゆる「持ち込み」で、記念のバット、開店祝いの一枚板、ご自身で仕入れたプレートなど、いろいろな品が工房に届きます。
そして持ち込みには、こちらで素材を用意する場合と決定的に違う点があります。刻印は削る加工なので、一度入れた線は消せません。データを作り直すことはできても、品物そのものを元に戻すことはできない。だから工房では、加工の話をする前に「これは替えのきく品ですか」を必ずうかがっています。
この記事では、持ち込みで刻印を依頼するときに知っておくと安心なことを、素材ごとの刻印の出方、送る前に確認したい3点、料金と納期の目安の順にまとめます。実際にIchisで加工した品の写真を並べているので、仕上がりのイメージを持っていただけると思います。
替えがきくか、きかないか。そこから決めます
持ち込み加工のご相談は、大きく2つに分かれます。ひとつは、同じものがまだ売っている品。もうひとつは、もう手に入らない品です。
前者は、量販されているバットやタンブラー、ご自身で発注したプレートなど。万が一うまくいかなくても買い直せるので、そのまま加工に進めます。後者は、記念の品、いただきもの、限定品、ご家族から受け継いだもの。こちらは失敗した時点で取り返しがつきませんので、進め方を変えます。
替えがきかない品の場合にお願いしているのが、同じ素材のテスト材を一緒に送っていただくことです。同じ金属の切れ端、同じ木の端材、同じ革のはぎれ。それがあれば、本番の前に出力を合わせて、色の出方と線の太さを確認できます。テスト材が用意できないときは、こちらで近い素材を探してお出しすることもあります。
持ち込みの品は、こちらが一番緊張する仕事です。素材は木・金属・アクリル・革・ガラスまで幅広く対応できますが、同じ「ステンレス」でも仕上げや厚みで出方が変わります。ですのでサンプルテストは必ずご提案しています。替えのきかない品を、いきなり本番で彫ることはしません。「これにも刻印できますか」というご相談だけでも大歓迎です。(西出)
どんな素材が対象になるかはレーザー刻印・切り出し(素材全般・持ち込みOK)のページに一覧があります。木材なら看板・バット・カッティングボード、金属ならステンレス・真鍮・アルミ・チタン、ほかにアクリル、革、ガラスまで対応しています。
素材によって、刻印の「色」は変わります
ここがいちばん誤解の多いところです。レーザー刻印は、インクを乗せる印刷ではありません。表面を削ったり焦がしたりして、その素材が持っている色を出す加工です。つまり「この色で入れてください」という指定ができません。素材が決まった時点で、出てくる色もほぼ決まります。
金属:明るい地に、暗い線が出ます

上の写真はステンレスのプレートです。明るい銀色の地に対して、刻印した紋様とロゴは濃いグレーで沈んで見えます。細い線でも輪郭が立つので、密度のある図柄と相性のいい素材です。
ただし金属は、同じ「ステンレス」でも種類と表面の仕上げによって出方が変わります。削った跡が銀色に光ることもあれば、この写真のように暗いグレーに沈むこともある。さらに、黒く着色されたアルミのように色の層が乗っている素材は、削ると下から銀白色が出てくるので暗い地に明るい線という逆の組み合わせになります。金属の持ち込みでテスト材をお願いしているのは、この振れ幅があるからです。素材ごとの違いは真鍮 vs ステンレス|刻印に向いている金属素材を比較で写真を並べています。
木:焦げて黒く出るので、いちばん差が大きい

木は、レーザーの熱で表面が焦げて黒く出ます。素材の中では地の色との差がもっとも大きく、筆文字のような太さのある図柄はとくにきれいに決まります。上の看板も、白木の地に黒い筆文字がそのまま乗ったような仕上がりです。
注意したいのは、同じ板でも濃さが一定にならないことです。木目の詰まったところと柔らかいところ、節のまわりでは焦げ方が変わります。均一なベタ面を広く入れたい図柄だと、この差が目立ちます。看板づくり全体の話は看板・銘板をレーザーで作る|木・アクリル・金属の選び方にまとめています。
アクリル:刻印より、切り出しが映えます

アクリルに刻印すると、削った部分が白く曇ったように出ます。透明や乳白色の板では上品に見えますが、上の写真のようなミラー系の板では、刻印よりも文字の形に切り出してしまうほうが素材の良さが出ます。持ち込みでアクリルのご相談をいただいたときは、刻印と切り出しのどちらが目的に合うかを最初にすり合わせています。
革は表面が焦げて濃い茶色に出ます。このほかガラスやシリコンも対応素材です。素材ごとの見え方はレーザー刻印で使える素材|木材・金属・アクリル・革で比較に実例写真つきでまとめてあります。
| 素材 | 刻印の出方 | 相性のいい図柄 |
|---|---|---|
| ステンレス・真鍮 | 銀色に光る/暗いグレーに沈む(種類と仕上げによる) | ロゴ・紋様・細かい図柄 |
| 着色されたアルミ | 暗い地に、明るい銀白の線 | 文字・QRコードなど明暗差が要る図柄 |
| 木 | 焦げて黒く出る(濃さにムラ) | 筆文字・太めのロゴ |
| アクリル | 白く曇る/切り出しも可能 | 切り文字サイン・ネームプレート |
| 革 | 濃い茶色に焦げる | ブランドタグ・小さめのロゴ |
送る前に確認したい3つのこと
お問い合わせのときに、この3点を写真つきで教えていただけると、ご案内がぐっと早くなります。
- 表面に何が乗っているか。塗装、メッキ、ニス、着色。この層があると、削った瞬間に下地が出ます。狙ってやれば持ち味になりますが、想定していないと「思っていた色と違う」になります。
- 刻印したい面の形と大きさ。曲面や段差のある面は、平らな面ほど広い範囲を一度に入れられません。バットのような丸い面なら、幅の狭い帯に収まる図柄が向いています。
- 中に何か入っていないか。電池、液体、オイル、圧のかかったもの。抜ける構造かどうかを先に教えてください。抜けない品は加工をお断りする場合があります。
入稿データの形式や線の太さについては、IQOS刻印 持ち込みデータの作り方|入稿前のチェック5項目とレーザー刻印の失敗を防ぐ|文字がつぶれる原因と対策にまとめてあります。細い線や小さすぎる文字がつぶれる話は、持ち込みでも同じように起こります。
料金と納期の目安
持ち込みの場合、料金は版代+デザインデータ作成代+刻印単価+送料の合計です。品物そのものはお客さまのものなので、本体代はかかりません。
| 項目 | 税込 | 備考 |
|---|---|---|
| 版代(セットアップ) | 5,500円 | 注文ごとに毎回発生します |
| デザインデータ作成代 | 2,750円 | 1デザインあたり/Ai形式の持ち込みは無料 |
| 刻印単価(〜100×100mm) | 1,500円 | 1〜49個。50個以上は450円 |
| 刻印単価(〜200×200mm) | 2,000円 | 1〜49個。50個以上は500円 |
| 送料 | 800円/1,500円 | 商品・数量で判定 |
いちばん多いご相談である「手持ちの品を1つだけ」の場合で計算すると、10cm角に収まる刻印1箇所で、版代5,500円+刻印1,500円=7,000円。デザインデータの作成もお任せいただく場合は、これに2,750円が乗って9,750円です(いずれも税込・送料別)。Ai形式のデータをお持ちなら、その分は不要になります。
もうひとつ、持ち込みで損をしやすいのが注文を分けてしまうことです。版代は注文ごとに毎回かかるので、同じ図柄で2回に分けて頼むと5,500円が二重になります。バットを2本、プレートを3枚といったご予定があるなら、まとめてお送りいただくのが確実にお得です。単価の詳しい表はレーザー加工刻印 価格表にあります。
納期は通常1〜2週間です。持ち込みの場合はここに往復の郵送日数が乗るので、記念日や式典に合わせたいときは、その2〜3週間前にはご相談ください。お急ぎのご事情があれば個別に調整します。それと、版代は注文ごとにいただく形なので、まとめてのご注文がお得です。1個からお受けしますが、数量が決まっているなら最初に教えてください。(西出)
ご依頼の流れは、①お問い合わせ(素材・加工内容・サイズ・数量をお知らせ)②お見積り ③デザイン確定 ④加工・納品、の4ステップです。品物は郵送で問題ありません。ただし加工前の品はこちらで包み直せないので、お送りいただいた梱包材は返送にそのまま使えるものだと助かります。
わたしが最初に勘違いしていたこと
入社したてのころ、わたしは「金属に刻印すれば、キラッと光る銀色の線が出る」と思い込んでいました。イメージしていたのは、鏡のような光沢の細い線です。
でも実際に仕上がったステンレスのプレートを見たら、線は暗いグレーでした。逆に、黒く着色されたカードを削ったときには、思っていたより明るい銀白色が出てきた。刻印の色は「レーザーの色」ではなく、素材の地の色と、削ったあとに現れる色の組み合わせで決まる——このことが腹に落ちたのは、両方を並べて見たときでした。
持ち込みのご相談で「イメージと違った」が起きるのは、たいていこの一点です。だからこそ、替えのきかない品にはテスト材を、そして少しでも迷ったら加工前のご相談を、とお伝えしています。刻印できる商品の一覧もご覧いただけますが、そこに載っていない品でも、まずは聞いてみてください。
お手持ちの品のことも、まずはご相談ください
「これに刻印できますか」の一言と、品物の写真。それだけで、加工できるかどうか、どんな出方になるか、いくらくらいかをご案内できます。1個からお受けしていますし、素材の相談だけでも構いません。
お問い合わせはこちらから、素材・加工内容・ご希望の時期をお知らせください。東京・浅草の自社工房でお待ちしています。
