素材・加工ガイド

メタルカードは自作できる?刻印の仕組みと実費

メタルカードは自作できる?刻印の仕組みと実費
目次
  1. あの色は、インクではありません
  2. 自作でつまずきやすい、3つの壁
    1. 1. 色の壁:出せる色は、素材の時点で決まっています
    2. 2. 素材の壁:「着色済みの薄いアルミ板」が要ります
    3. 3. 設備の壁:金属の表層を削るレーザーが要ります
  3. 頼んだ場合、いくらかかるか
  4. 「あとから1枚だけ追加」で6,120円変わります
  5. 4色を並べてみて、わたしが考えを改めたこと
  6. よくいただくご質問
    1. 手持ちのレーザー加工機でメタルカードは作れますか
    2. 自分で用意したカードに、刻印だけ頼めますか
    3. 1枚だけ作れますか
    4. 入稿データはどんな形式が必要ですか
    5. 会員カードやショップカードにも使えますか
  7. まとめ:仕組みが分かると、選びやすくなります

メタルカードを自作しようとしたとき、最初に立ちはだかるのは機械ではなく「色」です。あの黒やゴールドはインクで刷った色ではありません。アルミの表面に色の層をつけてあるもので、レーザー刻印はその層を削って、下から出てくる銀白色の地を見せる加工です。つまり文字の色は自分で選べません。ここを知らずに素材と機械だけ揃えると、思い描いた見た目には届かないことになります。

こんにちは、Ichis広報の紗英です。「メタルカードって自作できますか」というご相談は、思っているよりよくいただきます。名刺を1枚だけ金属にしてみたい方、ハンドメイドの作品に金属のタグを添えたい方、お店のカードを内製できないか検討している方。きっかけはさまざまですが、うかがっていくと知りたいことはだいたい2つに集約されます。そもそも金属に文字はどうやって入っているのか。そして頼んだらいくらなのかです。

この記事は、その2つに正面からお答えするものです。前半で刻印の仕組みと、自作でつまずきやすい3つの壁を実物の写真で説明します。後半は東京・浅草の自社工房で作った場合の金額を、1枚・50枚・100枚・300枚まで表で出します。売り込みではなく、判断材料としてお読みいただければと思います。

先にひとつだけ数字を書いておくと、Ichisでメタルカードを作る場合は1枚で6,500円、50枚で25,120円(1枚あたり502円)です。この差がどこから来るのかも、あとで内訳ごとに分解します。

あの色は、インクではありません

レーザー刻印は印刷ではありません。素材の表面を削ったり変色させたりして、その素材が持っている色を出す加工です。インクを乗せないので、色を後から足すことができません。

Ichisのメタルカードはアルミニウム0.22mmの板で、ブラック・ゴールド・ブルー・ピンクの4色があります。この色は板の表面についている着色層で、レーザーがその層を飛ばすと、下から地のアルミが銀白色で出てきます。ですから刻印した文字は、どの色のカードでも銀白色になります。「黒地に白い文字」に見えているものは、白いインクではなく、削れて出てきたアルミの地の色です。

同じデザインデータで製作したブラック・ピンク・ブルー・ゴールドのメタルカード4色。刻印された文字はどれも銀白色で出ている
同じデータを4色ぶん製作したもの。図柄はまったく同じで、違うのは地の色だけです。刻印された文字はどれも銀白色で出ています。

上の4枚は、まったく同じデータで色だけ変えたものです。ブラックは地と文字の明暗差が最大になるので、いちばんくっきり読めます。ゴールドは地の明るさと文字の銀白色が近いぶん、同じ線幅・同じ文字サイズでも印象がやわらかくなります。読みやすさは線の細さではなく、地の色との差で決まるということが、並べてみるとよく分かります。色ごとの見え方はメタルカードの色選び|4色サンプル写真で違いを比較で1枚ずつ大きく載せています。

メタルカードは「刷る」のではなく「削る」ので、こちらで文字の色を作ることはできません。黒いカードに白い文字が入っているように見えるのは、削ってアルミの地が出ているからです。ブランドカラーが決まっているお客さまとは、まず4色のどれが一番近いかから一緒に考えます。素材はアルミニウムの0.22mm、名刺サイズです。(西出)

自作でつまずきやすい、3つの壁

「機械さえあれば作れる」と思われがちなのですが、実際に工房でやっていることを分解すると、越えるべき壁は3つあります。順番に見ていきます。

1. 色の壁:出せる色は、素材の時点で決まっています

これが冒頭に書いた話です。刻印で足せるのは「削れた地の色」だけなので、黒いカードに金色の文字のような組み合わせは作れません。逆に、素の銀色のアルミ板を削っても、銀色の地に銀色の線が入るだけで、ほとんど読めるものになりません。仕上がりのイメージが先にある場合は、そのイメージが物理的に成立するかを最初に確かめる必要があります。

2. 素材の壁:「着色済みの薄いアルミ板」が要ります

Ichisが使っているのはアルミニウム0.22mm、名刺サイズで角を丸く落としたものです。ポイントは着色まで済んだ状態の板が必要だということ。刻印は色を足す工程ではないので、色は素材の側で用意されていなければなりません。ここで、作りたい色・サイズ・厚みがそろった板を手に入れられるかが2つ目の分かれ道になります。

3. 設備の壁:金属の表層を削るレーザーが要ります

Ichis浅草工房のファイバーレーザー加工機。本体にClass 4 laser productの警告表示があり、加工台には薄板を固定する治具が置かれている
Ichisの工房で使っているレーザー加工機。本体に「Class 4 laser product」の表示があり、加工台には薄い素材を押さえる治具が置いてあります。

写真が、実際にメタルカードを刻んでいる機械です。金属の表層を削るタイプで、本体にはClass 4 laser productの警告表示があります。Class 4は、直接の光も散乱した光も目や皮膚に当ててはいけない区分です。工房では保護メガネをかけ、換気をした状態で動かしています。

そして、機械があればボタンひとつで出てくるわけでもありません。加工台の上に、穴の空いた押さえ板が写っているのが見えると思います。0.22mmのカードは軽くて反りやすいので、平らに固定しないと焦点がずれて、同じ1枚の中で濃さが変わってしまいます。機械の縦の支柱についている目盛りは、その焦点を合わせるためのものです。刻印は、素材を置いて押すだけの作業ではなく、素材ごとに出力と焦点を合わせ込む作業でした。

やりたいこと 刻印で叶うか 理由
黒いカードに白(銀)の文字を入れる 叶う 着色層を削ると、下地の銀白色が出るため
黒いカードに金色の文字を入れる 叶わない 刻印は色を足す加工ではないため
1枚ずつ違う名前・番号・QRを入れる 叶う データを分ければ1枚ごとに変えられる
好きな色のカードを作る 素材しだい 色は板の着色で決まる(Ichisは4色)
銀色の素地のアルミ板に刻印する 読みにくい 地と刻印跡の色差がほとんど出ないため

頼んだ場合、いくらかかるか

ゴールドのメタルカードを枚数分まとめて刻印した束。ロゴ・氏名・住所・QRコードが銀白色で入っている
飲食店さまの会員カードを製作したときのもの。同じデータで枚数分をまとめて刻印しています。

Ichisのメタルカードの料金は、4つの足し算で決まります。すべて税込です。

  • 版代 5,500円(1注文ごとに毎回かかります)
  • デザインデータ作成代 2,750円(1デザインあたり。Ai形式でお持ち込みいただければ無料)
  • 刻印代:1枚目 1,000円、2枚目以降 380円/枚
  • 送料:1,000枚まで800円(SNS・HPへの掲載がOKであれば無料)

両面に入れる場合は、1枚あたり250円が加わります。納期は約2週間です。

枚数 版代 刻印代 合計(税込) 1枚あたり
1枚 5,500円 1,000円 6,500円 6,500円
50枚 5,500円 19,620円 25,120円 502円
100枚 5,500円 38,620円 44,120円 441円
300枚 5,500円 114,620円 120,120円 400円

片面刻印・Ai形式のお持ち込み・掲載OKで送料無料の場合の金額です。表を見ていただくと分かるとおり、1枚あたりの単価が下がっていくのは、版代の5,500円が枚数で割られていくからです。刻印代そのものは2枚目以降ずっと380円のままなので、単価は400円あたりに近づいていきます。価格の詳細はメタルカード刻印 価格表にも同じ数字を載せています。

1枚からお作りできます。ただ、版代の5,500円は1枚でも300枚でも同じようにかかるので、1枚だけがいちばん割高になります。そこは正直にお伝えしています。納期は約2週間、お急ぎのご事情があればご相談ください。ロゴのAi形式データをお持ちであれば、デザインデータ作成代の2,750円はいただきません。(西出)

「あとから1枚だけ追加」で6,120円変わります

この料金表から、知っておくと損をしない計算がひとつ出てきます。版代の5,500円は「1注文ごと」にかかる、という点です。

たとえば50枚を1回で注文すると25,120円です。ところが同じ50枚を25枚ずつ2回に分けると、1回あたり15,620円(版代5,500円+1枚目1,000円+24枚×380円)で、合計31,240円になります。同じ枚数を作っているのに、6,120円高いという結果です。

もっと身近なのは「あとから1枚だけ追加」のケースです。50枚のご注文のときに、その注文の中で51枚目を足すなら380円。納品後に「やっぱりもう1枚」と別の注文でいただくと、版代からかかり直すので6,500円になります。同じ1枚で6,120円の差です。

ですのでお見積りのときは、必ず「予備は要りませんか」とおうかがいしています。スタッフの入れ替わりがあるお店の会員カードや、名刺として配っていく用途では、数枚多めに作っておくほうが結果的に安く収まることが多いです。数量と費用の関係は、別の商品を例にノベルティを小ロットで作る|金属刻印の費用と数量の決め方でも整理しています。

4色を並べてみて、わたしが考えを改めたこと

この記事の写真を選ぶとき、4色を並べた1枚とゴールド単色の1枚を、しばらく見比べていました。恥ずかしい話ですが、わたしは最初、カードの色は好みで選ぶものだと思っていたのです。

ところが並べてみると、ゴールドのカードは下のほうにある住所の行が地の明るさに溶けて、ブラックのカードほどはっきりとは読めません。図柄はまったく同じデータなのに、です。色は見た目の好みの話だと思っていたのに、実際には情報が読めるかどうかの話でもありました。

それ以来、色のご相談をいただいたときは「そのカードで、いちばん細かい文字は何ですか」とうかがうようにしています。ロゴと名前だけの構成であれば、どの色でも印象で選んでいただいて問題ありません。住所・電話番号・QRコードのような細かい要素が入るなら、明暗差の大きいブラックが安全です。文字がつぶれる原因と対策はレーザー刻印の失敗を防ぐ|文字がつぶれる原因と対策に、QRコードだけを取り出した話はQRコードをレーザー刻印|金属で読み取れる条件にまとめました。

よくいただくご質問

手持ちのレーザー加工機でメタルカードは作れますか

お使いの機械が金属の表層を削れるかどうかで決まります。まずはその1点をご確認ください。そのうえで、着色済みのアルミ板を必要なサイズで用意できるか、薄板を平らに固定できるかが次の壁になります。

自分で用意したカードに、刻印だけ頼めますか

はい、持ち込み加工としてお受けしています。ただし刻印は削る加工なので、一度入れた線は消せません。買い直せない品の場合は、同じ素材の予備を一緒にお送りいただくようお願いしています。詳しくはレーザー刻印を持ち込みで頼む|替えがきかない品の注意点をご覧ください。

1枚だけ作れますか

作れます。片面・Ai形式のお持ち込みで6,500円です。1枚あたりの単価としては最も割高になりますが、「自分の名刺を金属で1枚だけ持ちたい」というご依頼は実際にあります。

入稿データはどんな形式が必要ですか

Ai形式です。お持ち込みいただければデザインデータ作成代の2,750円はかかりません。線の太さやアウトライン化など、入稿前に確認していただきたい点は刻印データの作り方|入稿前のチェック5項目にまとめてあります。

会員カードやショップカードにも使えますか

はい。1枚ずつ違う番号や名前を入れられるので、会員証・VIPカード・席札などにお使いいただいています。用途別の実例はメタルカードで作る会員カード・ショップカードにあります。

まとめ:仕組みが分かると、選びやすくなります

メタルカードの自作を考えるときに押さえておきたいのは、次の3点です。

  • 色はインクではなく素材の着色層。刻印は削って地の銀白色を出す加工なので、文字の色は選べません
  • 着色済みのアルミ板と、金属の表層を削れるレーザーの両方がそろって、はじめて同じことができます
  • 頼む場合は1枚6,500円から。版代5,500円は注文ごとにかかるので、まとめて1回で頼むのがいちばん無駄がありません

仕組みが分かると、「自分でやるか頼むか」だけでなく「何色にするか」「何枚作るか」も選びやすくなります。商品そのものの仕様はメタルカード制作のページに、ほかの素材でどんなものを作っているかは製作できるもの一覧にまとめています。

デザインが決まっていない段階でも、「こういうカードを作りたい」というイメージだけでご相談いただいて大丈夫です。色と枚数のあたりを一緒に決めるところからお手伝いします。お問い合わせフォームからお気軽にお声がけください。